勉強会

「食品ロスと脱炭素」勉強会(2024年5月13日)の報告

NPO法人農都会議は、2024年5月13日(月)夕、「食品ロスと脱炭素 ~脱炭素社会に向け、食品ロス対策について考えてみませんか?」勉強会をオンライン・会員限定で開催しました。
→イベント案内(開催趣旨・プログラム)

5月13日会員勉強会

食品ロスと脱炭素は、持続可能な未来をつくる上で重要なテーマです。本勉強会では、脱炭素に向けた食品ロス対策について、SDGsの視点も交えて考察することを意図して実施しました。

第1部は、日本工業大学NIT-EMS本部長客員教授の雨宮隆氏より、「脱炭素に向けた食品ロス対策―SDGsの視点から」のテーマで講演がありました。

雨宮氏が講演で述べられた要点は次の通りです。
(1)背景と重要性
・世界全体で生産される食料の25-30%がロスとなるか廃棄されている。
・世界のGHG排出量のうち食料システムからの排出が21-37%を占める。
(2)日本の食品ロスと食品循環資源の現状
・日本の食品ロス統計(可食部)は徐々に減ってはいるが、21年度事業系家庭系合わせて523万tもある。食品生産流通過程からの非可食部を含む事業系食料廃棄分は1680万tに及ぶが、うち70%は食品循環資源として飼料・肥料・エネルギー燃料に再利用されている。
(3)SDGsとの関係
・世界的な社会課題に対応するSDGs(持続可能な開発目標)の中で、目標12.3で食品ロス低減が謳われている。2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、生産・流通における食品ロスを減少させることを掲げている。日本も同様の削減目標に向けて国・地方自治体が施策を進めている。
(4)食品ロス削減推進法(2019年)に盛り込まれた基本方針のいくつか
・食品ロスを減らすための様々な対策
・流通過程での商慣習(1/3ルールなど)の見直し
・食べ残し持ち帰り(ドギーバッグ)を推進
・フードバンク活動の活用
・消費者とのコミュニケーションや普及啓発など
(5)まとめ
・日本の食品ロス量は世界食糧計画の食糧援助量に匹敵するほど大きく、脱炭素への取り組みの視点でも一層の低減が不可欠。
・食品ロス削減推進法により自治体レベルで幅広い対策が可能となっている。
・事業者と消費者の理解と連携が食品ロス削減には肝要だが、現状ではコミュニケーションがあまりにも不足。
・技術面では食品鮮度維持の技術開発が進んでいる。さらに、サプライチェーンの効率化実現にはIOT・AIなどデジタル技術の応用の余地が大きい。新しいアイディアの取り込みにより、食品ロスの削減が進むものと期待される。

5月13日会員勉強会

第2部ディスカッションでは、参加者から様々な面での問題提起があり、全員で議論が行われました。ディスカッションの一部を記します。

・農業生産の現場で廃棄される野菜(キャベツなど)の量が驚くほど多い実態を知るべき。
・料理番組でのムダな使い方への批判もある。
・食品売り場ではダイナミックプライシングの導入効果があるのではないか。
・新鮮なものほどおいしいという実感から手前どりが進まないのでは。
・家庭から出る生ゴミのコンポスト化はなぜ進まないのか?
・嫌われる悪臭を軽減する菌もある、レジの領収書に賞味期限を記載し冷蔵庫で自動読み取りする技術などで棚管理が合理的になるのでは。

今回は20名近い参加・申込があり、講演では丁寧な説明がありました。
ディスカッションでは、上記の様々なアイデアが出され、最後には高齢化が進む過疎地区などで余剰の食材から作った食事を弱者住民に提供するシステムなど、地産地消の農と食の関係づくりを考えるべきではないかとの議論へ及びました。
講師並びにご参加の皆様へ心より感謝いたします。

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